理系として品質管理工学を学んだ大学時代。就職活動が厳しい中、それでも品質管理という学びを工場併設型のファクトリー店なら生かせると考え、私はKKDJを選びました。日本に来たばかりで、もっと品質の統一性やデータの蓄積による改善が、日本の人々の繊細さに合わせられると考えたのです。現場配属で、とにかく店舗の状況をつぶさに観察する日々。半年後、倉敷のファクトリー店立ち上げに関わったことで「品質管理と店舗運営は、セットである」ということに気づかされました。自分がどれだけ品質管理に携わりたいと望んでも、まず商品への考え方や求められる品質、顧客へ受け渡すまでのプロセスを理解していなければ、何をどう管理するのかを語ることはできないと初めて気づいたのです。自信を持ってKKDJの人々、何よりお客様に胸を張れる品質とは、現場にこそ答えがあると痛感した瞬間でしたし、就職先に選んだことを素直に良かったと思えましたね。
一昨年に品質管理担当となり、いよいよ今年、改めてKKDJ の日本規格が始まります。ここに至るまでは現場とのやりとりや微細な差をどう詰めるか、本当に苦悩の連続でした。何よりドーナツの生地は、文字通り「生き物」。夏場は気温の影響で膨らみ、冬場は乾燥してしまう。しかも工学系の私は生物をゼロから学ぶ必要もあり、KKDの世界統括チームとは英語でコミュニケーションをとり・・・一年を通じて変わらぬ品質にする工夫を、上司や現場の方々に教わりながら必死に創り上げました。品質管理は、企業の「最後の砦」でもある。中途半端な知識や、効率性を度外視した現場に定着できない規格では、企業の存続すら危ぶまれます。責任の重さを感じながらも、学んだことを生かせる喜びは、携わる領域の限られた大きな組織では得られない「チャンス」。変化を恐れず、当事者としてこのブランドを創っていく人に、私の描く品質を共に支えて欲しいと願っています。